潮田健次郎

熱意力闘 私の履歴書による  2014年10月11日


住生活グループ創業者 潮田健次郎(うしおだけんじろう)

LIXIL(リクシル)グループ株式会社

サッシ,建材,住宅機器メーカーを傘下とする持ち株会社


創意工夫と熱意力闘が人と企業を成長させる


第Ⅰ部私の履歴書


金科玉条としてきた先人の教え

①人と同じことをしていたら,人と同じ結果しか得られない

②寝ていて人を起こすな (まず自分から起きよ,率先垂範が大切)

③破廉恥なことだけは絶対するな(法令を遵守せよ)

④辞を低くして(相手に敬意をもって)謙虚に知識を吸収せよ


本田静六「私の財産告白」

「人生の最大幸福は職業の道楽化にある。富も,名誉も,美衣美食も,職業道楽の愉快さには比すべくもない」


三菱総合研究所 牧野昇

「本業から離れず,時代に合わせて進化せよ」


アルフレッド・スローン

「人事を誤ったらすぐ改めろ」


第Ⅱ部 潮田健次郎経営を語る

 「数字に強い」というのは数字からその数字が持っている意味を読み取って,アクションを起こさせる人のことをいうのである。


「彼を知り,己を知れば百戦殆(あや)うからず」とは

①お客様は何を望み,何を求めているのか。

②競争相手はどのように対応しているのか。

③わが社はどのように対応し,どのように優位をつくるのか。

 状況は刻々と変化するが,常に彼と己のすべての状況について正確に知ることができるなら,競争に負けることはない。


人は経営の根幹である

人を減らすよりも売上げを増やし,利益を高める方が賢明である。

生産性の3要素

①情報技術と管理技術の高度活用

②高い商品知識と専門技術を持つこと

③熱意力闘


売上げを高めるには

①品質,コスト,納期の優位

②販売戦力の増強

③生産力の増強

④利益の拡大

⑤投資の増加


人間は追いつめられなければ知恵も出ないし,努力も鈍る。

「目標必達」という重い責任を担うことで初めて渾身の力が発揮でき,能力が高まるのである。


私は「優良企業とはどういう会社か?」と聞かれたら,「当たり前のことが60%の人ができている会社である」と答える。 一橋大学 伊丹敬之教授


当たり前のことを実行する5つの関門

①当たり前のことはどういうことか決めていない。

②決めがあってもそれを知らされていないか,方法を教えていない。

③自分は当たり前のことを言っていると思い込んでいるが,実はできていない。

④当たり前のことができていない人に,当たり前のことを教えていない。

⑤当たり前のことを継続して実行する,仕組みができていない。


当たり前のことをするためには,マニュアルにして形式知にすること。改善の要諦は見えるようにすること。


悲観主義は気分に属し,楽観主義は意志に属す。

良い業績を上げている会社は,今年は忙しいぞと言う「意志」を持ち,沈んでいる会社は,不況で売れないという「気分」を持っているのである。


報告書の書き方

①読む側にとって重要な情報に絞れ。読む人がアクションの取れる報告を箇条書きにする。

②字数を減らす。A4判1枚,3分以内で読めて意味が分かること。

④トップメッセージは,小題をつけて,記述は4行以内。5分以内に読めること。


珠玉の文化

①綱領に定めた使命の実行力

②上級者ほどよく働く社風

③派閥をつくらない・つくらせない。

④イノベーションによる限りない生産性の向上

⑤文化を継承するための公正にして厳格な人事


第Ⅲ部 父・潮田健次郎を語る  潮田洋一郎

・第一に家庭を大事にする人だった。

・食事の時は,如何に経営が面白いか,うちの会社はどういう状態か,強大なライバルとどう競争しているか,という話題が多かった。

・東大の経済学部で学習したことを夕食で父に語ると,父はいつも関心を持ち,そこから会話が弾んだ。

・宴席などは時間の無駄として滅多に出なかった。

・父の友人経営者の評は,「お前さんの親父ほど退屈な人はいない。会えば仕事の話しばかりする。しかし,潮田ほど脇の締まった経営者はいない」であった。

・アイディアの試行錯誤は,200冊に及ぶ膨大な日記ノートになった。

・母は,父をドン・キホーテと評した。父は家で晩酌のたびに絵空事のような大きな抱負を語った。人の解し得ない動機に衝き動かされて,どこか知らぬ所に邁進するかのようだった。

・200冊のノートには,個人的なことは1つも書いていない。売上げ表やシェアの図,特に気にしている会社の株価は,執拗に頻繁に表に書かれていた。人事の組織図もあれは,ある企業がなぜ成功したか,あるいはなぜしくじったか,緻密な分析,会社のビジョン,政治経済についての父の視点などぎっちりと埋め尽くされていた。新聞や雑誌の切り抜きもあった。

・父は8時には就寝して,夜中の3時から起きて家で仕事をする。5時に朝食をとり,6時に会社の門番がやってくる時間に出勤していた。日曜日は家族と出かけ,レストランで食事をした後は,大学ノートに何かを書いていた。