技士道  西堀栄三郎

技士道十五カ条  ものづくりを極める術  朝日文庫


 夢を持ち続け,努力をしていれば,チャンスは必ず,誰にでも,いちか訪れるものである。いざというときに「これはあいつしかいない」ということになって,パッと夢が現実になるのだ。

 大事なことは,夢を持ち続けることである。夢を持ち続けていれば,人生の分かれ道に遭遇したとき,自然と夢に近い方の道を選び,次の分かれ道が来るとまたそっちの方へと,夢が自然に自分を誘導してくれる。そうしてだんだんと,夢を実現させる下地ができていくのである。チャンスを逃がすか捕まえるかは,それを受ける下地という「受け皿」の準備ができているかとうかによる。せっかく巡ってきたチャンスも受け皿がないことには受けることができないのだ。


自分の限界を乗り越えることで,人間は大きくなる。

ひとつ階段を上がると,「この前はああいうことにも堪えられたんだ」という自信がわき,それが,もっときついことに挑戦する勇気を与えてくれるのである。

そして,経験を少しずつ積むことによって能力が上がっていく。そして,その能力はさらに大きな自信を生む。


新しいことをやる者には,楽観的な態度が必要である。自分の運というか,運命というか,「神様が必ず守って下さる」という信仰心のようなものが,楽観的な態度をつくることになる。

科学とは「森羅万象における知識を発見すること」。科学の背景には必ず発見がある。

技術とは「科学で得た知識を何らかの目的に結びつけて物を作ること,またはそのシステムを作ること」


文化とは「人間の精神的欲望を満足させるもの」

文明とは「労働や技術や資本が組織されて生み出される物質的な豊かさ」


真(科学),善(人倫),美(心を引かれるもの)


技術とは、道具や機械を結集した部分だけではなく,組織をどのようにシステム化するかとか,経営をどうするか,販売をどうするかといったノウハウ,あるいは現場での熟練,手法,技能というものまで,あらゆるものを含んでする。人間の知的行動に価値を生ませるもの一切を「技術」といい,それに携わる人々を「技術者」という。